鹿さん ボクシング編4

 

 

鹿さんはその後悩んでいました。

 

「確かにボクシングの経験があれば肉食動物への防御にはなるし、仲間を護る事にも必ず活かせる。

 

しかし、自分がサバンナを空ける事でどれだけのリスクを背負う事になるだろうか・・・。」

 

などの問題が頭を過ぎるのです。

 

 

ライオンさんは

「世界一のジムに入門できる。自分の可能性を生かすには格好のチャンスだ。」

 

と落ち着きを隠せない時間を過ごしていました。

 

 

角蟹会長は言葉を出さず、付き人とも話すことなく部屋に篭ったまま数日を過ごしました。

 

 

そして会長の帰国が明日に迫った朝、日が昇る時にはサバンナに走る一台のジ-プの姿がありました。

 

会長は真っ直ぐに鹿さんの所に行きました。

 

 

 

鹿さんも会長が来る時間を予期し、通り道で出迎えました。

 

 

会長はゆっくり車を降りると

 

「鹿さん良い答えはいただけるかと思うが、先に話させてもらうよ。」

 

「今回、サバンナの環境は我がボクシングジムには必要だと感じた。

 

更に一度人間界を去った鹿さんに東京の環境は良いとは言えない。

 

また、お仲間の状況が気になってはボクシングに打ち込む事なんて不可能だと思う。

 

 

私が鹿さんの立場ならそう考える。

 

 

そこで、『角蟹サバンナボクシングジム』を設立する事に決めた。」

 

「鹿さんは気持ちが固まったら来てくれれば良いと思う」

 

 

そう語ると、会長は背中を向けようとしました。

 

 

すかさず鹿さんは

 

「会長、自分は会長の期待に応えられるかは判りません。

 

しかし、『角蟹サバンナボクシングジム』が出来た暁には必ずご挨拶に伺います」

 

とだけ言いました。

 

 

 

会長はもう一度、向きなおし、鹿さんの目を見ながら

 

「ありがとう!」

 

と一言述べて足早にサバンナを去っていきました。

 

 

 

 

 

その頃、ライオンさんは国際空港を後にしていました。

 

 

 

新たなドラマの始まりを告げるかのように、サバンナの空は雲ひとつ無い澄みきった青空でした。