鹿さんボクシング編 7


 

いよいよプロテストが明日に迫り、皆、最終調整となりました。

 

練習内容や方法は個々に違っていましたが、

 

鹿さんを含め誰もが最高の状態に仕上がっています。

 

ここは流石の角蟹ジムです。

 

スパーリングも個々に甲乙付けがたく、

 

階級は違えど、特徴をフルに活かした仕上がりは互いに手応えを感じるものでした。

 

 

 

 

そしてプロテストの当日。

 

これは申し分なく、誰もが勝利することができ合格となりました。

 

 

 

皆で喜びを分かち合いましたが、一つ、

 

お互いにどのような練習をしていたのかが解らないのです。

 

 

ききたい気持ちもありますが、

 

自分の練習方法を教えたくも無いので聞くこともできません。

 

 

ただ、何故か鹿さんだけにはどうしても聞いてみたい気持ちは誰もが同じでした。

 

 

そこで、フォックスさんが代表して問いかけました。

 

 

「鹿さん!鹿さんはジムでは一度も練習していなかったけど、そのような練習をしていたの?」

 

 

 

すると、鹿さんは答えました。

 

「必ず朝同じ時間に挨拶をしにジムへ顔を出し、

 

いつも通りの群れに戻って日々の役割をこなしながら、

 

自分の欠点を克服する事と、

 

これまで攻撃する事自体が有り得ない事だったので、

 

ライオンさんだったらどうしたかとか

 

別の動物達の場合を考えて自分なりにできる事を日々イメージしたのさ!」

 

 

 

 

フォックスさんは「でも鹿さんは一度もサンドバックを叩かなかったでしょ!」と聞くと、

 

 

鹿さんは、

 

「自分は万能ではないんだ~!牙も細ければ爪も弱い。

 

だから皆とは違った戦法が見つけられなければ、絶対に勝てない。

 

つまり、

 

人と同じ事をやっても本々備わっていない部分だから、

 

そこのトレーニングはハナから無意味なんだ。でも勝てたでしょ!

 

それでよかったんだよね!」

 

 

 

皆、首を傾げながら黙ってしまいました。